投資の「目的」と「基本原則」は ── 何のために資金を投じるのかとどうすれば長期的に目標達成へ近づけるか ── を結び付ける羅針盤です。目的は大きく「資産を守る」「資産を増やす」「資産から収益を得る」「特定リスクをヘッジする」などに分かれ、原則としてはリスク-リターンの均衡、分散、複利、インフレ調整、流動性確保、コスト最小化、そして行動バイアス管理が土台になります。以下で体系的に解説します。
1 目的:投資で何を達成したいか
代表的目的 | 主なターゲット資産 | 典型的リスク許容度 |
---|---|---|
①資本保全(Capital Preservation) | T-Bill、MMF、短期国債 | 低 |
②インカム(Income Generation) | 配当株、優良社債、REIT | 中 |
③資本成長(Capital Appreciation) | 株式、成長株ETF、PE | 高 |
④インフレ/通貨ヘッジ | コモディティ、TIPS、外貨建資産 | 中 |
⑤価値志向・ESG等の価値整合 | ESGインデックス、テーマ型ETF | 中 |
– 証券会社やIFAが用いる公式区分でも「保全」「インカム」「成長」などの目的別ポートフォリオが提示されています。(LPL金融, スマートアセット)
– 目的が複数ある場合はウエート付けし、時間軸ごとにサブポートフォリオを組むと管理が容易です。(スマートアセット)
2 基本原則
2.1 リスク-リターンのトレードオフ
- 高リターン期待には必ず高い損失リスクが伴います。これは株式1銘柄でもポートフォリオ全体でも同様です。(Investopedia)
- “安全資産”とされる預金でさえ、インフレ率が利率を上回れば実質価値は目減りします。(インベスター・ドット・ゴブ)
2.2 分散とモダンポートフォリオ理論(MPT)
- 異なる値動きを示す資産を組み合わせると、ポートフォリオ分散効果で同一リターンに対するリスクを下げられます(効率的フロンティア)。(Investopedia, CFA Institute Research and Policy Center)
- 投資対象が株式中心でも、業種・地域・サイズを分散すると分散メリットが得られます。(CFA Institute Blog)
2.3 複利と時間
- リターンを再投資すると収益が雪だるま式に増える「複利効果」が働きます。(バンガード)
- Rule of 72:72÷期待利回り(%) ≒ 資産が倍になる年数。年9%なら約8年で倍増します。(インベスター・ドット・ゴブ, Investopedia)
2.4 インフレと実質リターン
- 実質リターン=名目リターン−インフレ率。インフレ率3%の環境で年間5%の利回りなら実質リターンは2%にとどまります。(インベスター・ドット・ゴブ)
- 米国ではTIPS、日本では物価連動国債がインフレヘッジの選択肢になります。(バンガード)
2.5 流動性(Liquidity)
- 流動性リスクは「必要なときに合理的コストで現金化できない」危険を指します。株式や国債は高流動性、不動産や未公開株は低流動性で追加リスクプレミアムを要します。(Investopedia, Investopedia)
2.6 コストと税効率
- 過去データではファンドの手数料(Expense Ratio)が低いほど将来リターンが高い傾向が統計的に確認されています。(モーニングスター)
- ETFは「現物交換機構」により分配金課税を最小化でき、課税口座では投資信託より税効率が高い場合が多いです。(Fidelity)
2.7 行動ファイナンス
- 過confidence、損失回避などのバイアスは短期的な判断ミスを招きます。事前に資産配分ルールとリバランス日を定めることで「感情売買」を抑制できます。(CFA Institute Research and Policy Center, Investopedia)
3 実践へ落とし込むチェックリスト
- SMART目標を設定(金額・期日・許容リスクを定量化)。
- 流動性確保:生活防衛資金(3〜6カ月生活費)を別口座に保持。
- 資産配分を決定:目的ごとに株式/債券/その他の比率を策定し、MPT理論を参考に効率化。
- 商品選定:手数料の低いETFやインデックスファンドを中心に組む。
- リバランス:年1〜2回、比率が目標から±5ptまたは±25%乖離したら調整。(Investopedia)
- モニタリング:ライフイベント・税制変更・市場環境を定期的に反映。
次の学習ステップ
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リスク許容度診断とアセットアロケーション具体例
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複利シミュレーション(金額・利回り・期間を変えたグラフ化)
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全世界株 vs. 国内株 vs. 債券の長期リスク比較
深掘りしたいテーマがあれば遠慮なくどうぞ。